【草刈愛美(サカナクション)】誰もが楽しめる音楽の場づくりへの想い。

2年ぶりにライブ活動を復活させるサカナクション。世代を超え、誰もが楽しめるライブという空間を創造し続けるバンドの、みんなと共有する場づくりに対するメッセージ。


聞き手・文 = 菊地 崇(JMFA会長) 
写真 = 須古 恵 


–––- お子さんが産まれて、音楽との向き合い方に変化はありましたか。

草刈 変わったんだと思います。自分の好みだとか傾向だとか、具体的にこれが変わったということはないかもしれないけど。すごく身近に関わる人間がひとり増えたわけですから、その子が聞く、その子が出会う音楽だったりが増えていったという感覚です。

–––- お子さんをライブに連れていくこともあるのですか。

草刈 半ば無理やり誘ったこともあります(笑)。去年は「フジロック」にもついて来てもらいました。

–––- お子さんは「フジロック」を楽しまれていましたか。

草刈 本人は、音楽はまあまあ好きなんですけど、それよりも自然のなかで鳥を見たりするのが好きなんです。そっちを一番の目的にしているようでしたね。子どもとの「フジロック」は去年はじめてでした。もうちょっと小さな頃に、それこそおんぶしながらでも行きたいなって思ってましたけど、コロナの時期も重なってしまっていましたから。

–––- 「フジロック」をはじめ、子どもが楽しめる場所が用意されているフェスが増えてきています。

草刈 福井の「ワンパーク」もそうでしたね。子どももすごく楽しんでいました。ステージが見える場所にキッズエリアがあって。そこで遊んでいる最中に「あ、羊文学だ」ってライブを見たり。私自身も一緒にフェスを楽しめている感覚があって、すごくうれしかったんです。自分では興味あるライブを聞きに行きたい。子どもは野外の広い場所で遊ぶ。今までに出会ったことのない体験、出会ったことのない味。そんなちょっと非日常的な時間を過ごせることって楽しいですよね。

–––- サカナクションのライブも、フェスに近いというか、みなさんが楽しめる空間に移行しているように感じています。

草刈 最初はロックバンドとして、ライブハウスの数百人のなかで走り出しています。お客さんも元気のいい同世代。そういう人たちとのコミュニケーションからスタートしているのですけど、ありがたいことに、どんどんお客さんの人数とともに幅も広がってきています。15年以上もやっているので、お客さんも一緒に年齢を重ねているわけですから、子育てをしている方も増えてくる。ライブでは会場にいる全員と対面しているので、お客さんがどうなっているのかというのは、身体で感じながらずっとやってきていますから。

–––- それが親子席にもつながっているのですか?

草刈 フェスもそうですけど、子どもがいても安心して楽しめる場所、逃げ場があるとか見やすい場所があるライブが増えてきていると思います。今回のツアーでは、新たな試みとして会場保育サービスをするんです。この2年間のライブを休む前には、ライブで子どもを預かるという発想自体ありませんでした。どんどんお客さんも多様化しているし、ライブは誰もが楽しめる場であってほしいと思っています。私もそれに協力できることがあれば、どんどんしていきたいと思っています。

–––- 親子席にしろ会場保育サービスにしろ、ライブに小さな子どもを連れていっていいと思ってもらえるだけでも大きな進歩だと思います。

草刈 母親になってから、例えば夜にご飯を食べにいくことすら気にかけるということがあります。私の友達にも私たちのライブに行きたいけれど、小さな子どもがいるから行けないとか。保護者の方が自分の楽しみを断念してしまう。みなさんが、自分の意志じゃないところでライブに行けないっていう状況を減らすことができたらいいなと思います。

–––- 今回のツアーでは、子ども用イヤーマフの無料貸し出しも行います。

草刈 耳が気になって検査に行ったことがあるんですね。そのときに、一度悪くなってしまった内耳の細胞は元に戻らないということを教えていただいて。自分の耳だけではなく、お子さんの耳も守っていただけたらと思っています。

–––- ライブ会場での、みなさんが楽しめるための様々なアクションが次のステップにつながっていくといいですよね。

草刈 私たちとしてもこれからなので、やってみることでいろいろと見えてくることもあると思います。みなさんが楽しめる音楽の場を作ること。それを一緒に追いかけていけたらなって思います。

–––- 2年ぶりのツアーを目前に控えて、今はどんな心境ですか。

草刈 2年間お休みして、期待していただいている声もたくさん届いています。その期待に応えるために、まずは体調にも気を使いながら、今のサカナクションをみなさんに提供できればと思っています。自分たちでもやってみないとわからない。前と比べてどうなのかとか、逆に新しくやれることはどんなことなのかとか。ライブの前後には、メンバーだけではなくスタッフも含めてみんなが集まって話し合うこともあります。気が付いたことをセクションを超えて話し合う。

–––- それがサカナクションのライブのクオリティにつながっているのですね。サカナクションのライブは常に進化しているというか、新しい刺激をもらっていました。

草刈 新しい挑戦が、自分たちのやりがいにつながるのも確かだと思います。ギリギリなところで攻めているんですよね。いつもすごいドキドキしながらやってますけど(笑)。

草刈愛美(サカナクション)

サカナクションのベーシストとして2007年にメジャーデビュー。2015年に女児を出産。4月の幕張メッセを皮切りに、サカナクションとして2年ぶりの全国アリーナツアーが開催される。このツアーでは、新たな試みとして満1歳から6歳(就学前)を対象とした会場での保育サービス(有料)が実施される。

SAKANAQUARIUM 2024 “turn”

2024.04.20/21@幕張メッセ国際展示場9-11ホール

2024.05.02/03@マリンメッセ福岡A館

2024.05.18/19@ゼビオアリーナ仙台

2024.05.24@北海道立総合体育センター 北海きたえーる

2024.05.28/29@大阪城ホール

2024.06.15/16@ポートメッセなごや 第3展示館

2024.06.29/30@広島サンプラザホール

2024.07.09/10@ぴあアリーナMM

日本ミュージックフェスティバル協会

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